コラムでは現在、観光名所でコンシェルジュに所縁のある場所をご紹介しています。第四回目は、フランス　ノルマンディ地方のリジューLisieuxという街です。

この街の駅に到着すると、目の前に荘厳で大きなバジリカ大聖堂が見えてきます。このバジリカ大聖堂こそ、あの聖人リジューの聖テレーズ大聖堂です。聖テレーズについてまずはお話しましょう。私は女性の聖人の中でテレーズが一番好きです。一度は訪ねてみたいとずっと願っていて、ようやく今年の9月、その夢を実現する事が出来ました。今年2025年は、1925年5月25日、聖テレーズが聖人となった日から100年目。そんな記念すべき年に訪ねることが出来、感無量です。

リジューの聖テレーズ（テレジア）（フランス語: Thérèse de Lisieux, 1873年1月2日 – 1897年9月30日）は、「幼いイエスの聖テレーズ」「小さき花の聖テレーズ」などの愛称で親しまれています。本名はマリー・フランソワーズ・テレーズ・マルタン。（有名なマザー・テレサ（コルコタの聖テレジア）の「テレサ」という修道名は、このリジューのテレーズの名からとられています）フランスのアランソンに生まれ、幼少期からキリストに倣う生活に憧れをもち、念願かなってリジューのカルメル修道会に入会しました。その後祈りの生活に邁進しますが、肺結核を患い闘病生活となり、24年の短い生涯を終えました。

宣教の保護者として知られ、バラを降らせるという言葉を残したことから、シンボルとしてバラを持っています。その言葉は、「私は地上に善を為すために天での時を過ごしましょう。私は天から薔薇の雨を降らせましょう」。(Je veux passer mon ciel à faire du bien sur la terre. Je ferai tomber une pluie de roses.）この言葉通り、死後、彼女のとりなしによって多くの奇跡（病気の治癒、回心など）がもたらされました。

先ほども伝えましたが、1925年5月25日は、聖テレーズが聖人となった日です。死後、自叙伝『ある霊魂の物語』（日本語版の題名『幼いイエスの聖テレーズ自叙伝』）が出版されたことで聖テレーズの名がフランスのみならず、ヨーロッパ中、さらには世界中に知れ渡る様になりました。聖テレーズは、ジャンヌ・ダルクに次いでフランスの第2の守護聖人でもあります。1997年10月19日には教皇ヨハネ・パウロ2世によって深い霊性と思想がたたえられて「教会博士」に加えられました。聖テレーズは、自分の天職を「愛」であると語っており、修道生活においても、人の欠点を許すこと、他人に惜しみ無く愛を与えること、人に譲ること、誤解されても相手を責めないこと、批判されても甘んじて受けること、苦手な相手のためにも愛をもって祈り善行をなすことを「完徳」への第一歩であると見なしています。今年2025年は、聖テレジアの列聖から100年目の年、あらためて世界の平和を祈り続けたいと思います。

さて、リジューは、小さな街ながら、起伏に富み、ノルマンディ地方固有のフランス語でコロンバージュと呼ばれる木組の家がたくさんあり、美しい噴水のある公園を巡るなど散策も楽しいです。郵便局の玄関やこの街で一番の老舗ホテルGrand Hotel de L’Espéranceの中のレストラン、「Chez Alain」のお皿にはコンシェルジュのシンボルの2つの鍵が交差したマークが付いています。（プロフェッショナルコンシェルジュが所属する協会、レ・クレドールのロゴマークにも似ています）リジューの駅を超え更にノルマンディ地方に向かうと、かの有名な観光地、ドｳーヴィルDeauville/トｳルーヴィルTrouvilleがあります。美しい海岸線、ヨットハーバー、シックなホテル「ホテルバリエール ル・ノルマンディ」や「ホテルバリエール ロワイヤル ドｳーヴィル」、又カジノ、競馬場、高級ブティックがあります。

ホテルバリエール ル・ノルマンディは、1966年のフランスの恋愛映画、監督はクロード・ルルーシュ、出演はアヌーク・エーメとジャン＝ルイ・トランティニャン、第19回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した映画「男と女：Un Homme et Une Femme」の舞台になりました。ドｳーヴィルは、かつて上流階級の社交場。ココ・シャネルが初めて自身のブティック（帽子店）をオープンさせて場所でもあります。今でもその跡地が残っています。トｳルーヴィルは、漁港として栄え、庶民的な街並み、新鮮な魚の市場があります。Fruits de Mer：魚介の盛り合わせ、カマンベールチーズ、ノルマンディ地方で作られるシードル（リンゴの炭酸酒）など、ノルマンディ地方ならではの食も堪能できます。