先月より、私自身が教鞭を執っているホスピタリティ関連の学校での「コンシェルジュ実習」という授業からコンシェルジュに必要な教養をご紹介しています。教養は、ゲストとのさりげない会話、又会食や社交の場面で欠かせません。第四回目は世界三大料理の二つ目「トルコ料理」後半です。トルコ料理が世界三大料理の一つとなった壮大なお話の続きです。今回は具体的なお料理を紹介します。
トルコ料理の小皿料理は「メゼ」と呼ばれています。食前酒と一緒に食べる野菜中心の小皿料理で、トルコの地酒ラクというアニス風味のリキュールによく合う味付けです。オリーブオイルをベースにレモン、トマト、玉ねぎがよく使われ、これに塩、スパイスやハーブ、ヨーグルトなどで味付けしています。又フムス(ひよこ豆のペースト)、野菜(焼きナス、ニンジン等)とニンニク入りヨーグルトを混ぜたメゼが代表的です。
トルコ料理の定番サラダは、チーズやトマト、キュウリ、唐辛子、などをサイコロ状に切って塩、オリーブオイル、レモンで和えたシンプルな「チョバン・サラタス」(チョバン=羊飼い、サラタス=サラダ)です。
トルコはチーズ大国。定番は白チーズですが、牛・羊・ヤギのミルクから作ったものや全乳・脱脂粉乳から作ったもの、熟成させたもの等、それぞれの組み合わせで多種多様にあります。トルコでチーズは前菜にもサラダや料理にも幅広く使われます。トルコ語でスープのことを「チョルバ」といいます。代表的なものは「メルジメッキ・チョルバス」というレンズ豆と玉ねぎを裏ごししたポタージュスープです。その他にも穀物や小麦入り、お肉やシーフード、ヨーグルトのスープ等、とても種類豊富です。
「ケバブ」と聞くと日本では、あの回っている大きなお肉をイメージされるかと思いますが、「ケバブ」は肉・魚・野菜などを焼いて調理する料理の総称です。屋台でお馴染みのケバブは、正式にはドネルケバブ(ドネル=回転)といいます。その他にもお肉や野菜を串に刺して焼いたシシケバブ(シシ=串)、太めの輪切りにしたナスとスパイスで味付けした肉団子を交互に串に刺して焼いたパトゥルジャンケバブ(パトゥルジャン=ナス)など、多種多様なケバブ料理があります。ケバブと並んでトルコを代表する肉料理に「キョフテ」があります。ひき肉にスパイスを混ぜたトルコ風のミニハンバーグ(または肉団子)です。家庭でもよく作られ、レストランでもキョフテがない店はないほど、トルコで一般的な肉料理です。
一番ポピュラーなものは「ウズガラキョフテ」です。ウズガラは焼く・グリル、キョフテが肉団子という意味の塩コショウとスパイスで味付けして焼き上げたシンプルな料理です。又B級グルメには、焼いた鯖と玉ネギ・トマト・レタスなどの野菜を一緒パンに挟んだ「サバサンド」があります。屋台でもレストランのメニューとしても楽しむことができます。ピデはトルコ版のピザ。生地には砂糖が使われていて、ほのかに甘いふっくらモチモチとした食感。種類も豊富で船の形をしたものや生地にひき肉と野菜だけをのせたもの、チーズと卵だけをのせたものなど様々です。
前回のコラムではパンのお話をしました。トルコの主食はパンですが、実はお米を使った料理も多くあります。メイン料理の付け合せにピラフを添えたり、お米を使った前菜があったり、デザートもある程、幅広く料理にも使われています。エビピラフをはじめ数多く種類のあるピラフですが、この「ピラフ」の語源はトルコ語の「ピラウ(Pilav)」といわれています。パエリア・リゾットに並んで世界三大米料理のピラフの語源も実はトルコだったというわけです。デザート、スイーツも豊富です。日本でも知名度が高い伸びるトルコアイスは、「ドンドゥルマ」といいます。ちなみに、トルコ語でドンドゥルマはアイスだけでなく氷菓子全般のことをいいます。トルコアイスが伸びるのは「サーレップ」というラン科の植物の樹液を粉にしたものが材料に入っているためです。
ヨーグルトは、原産国をブルガリアだと思っていらっしゃる方も多いと思いますが、実はトルコが発祥の地。ヨーグルトという名前は、トルコ語の「Yoğurt(ヨーウルトゥ)」から来ています。ヨーグルトの語源になった「Yoğurt(ヨーウルトゥ)」はトルコ語で“攪拌(かくはん)する”ことを意味する動詞の派生語で、トルコでのヨーグルトの製法が反映されているのです。さらに「シャーベット」も、実はトルコ語が語源です。トルコ語のŞERBET(シェルベティ)は元々「飲む」という意味の「シャリバ」が語源で、フランス語のSORBE(ソルベ)や英語のSHERBET(シャーベット)はトルコ語のŞERBET((シェルベティ)から派生したと言われています。ちなみにトルコのシェルベティは、蜂蜜、バラ、スパイスやフルーツ風味の薄いシロップの様な冷たい飲み物で、オスマン帝国時代の宮廷で愛飲されていました。
にコーヒーについてです。10世紀にエチオピアで発見されたと言われていますが、昔は生のコーヒーの実や葉を煮てその汁が飲まれていたようです。アラビア半島界隈でもこの方法で飲まれていました。その後13世紀頃からイエメンでは焙煎したコーヒーを飲み始め、16世紀初頭にオスマン帝国のイエメン知事オズデミル・パシャがその味に惚れ込んで1517年にイスタンブールにコーヒー豆を持ち込み、スルタン(皇帝)に献上しました。それからトルコ人の間でコーヒー豆をじっくりと焙煎し細かく粉上に挽いて、ジェズヴェという小鍋で水から煮出して濾過せずに飲むと言う製法が確立され広がっていき「トルココーヒー」と名付けられました。これが現代にも続く「焙煎した豆から抽出したコーヒー」の飲み方の元祖というわけです。長い歴史と共に育まれてきたトルコの食文化。初めてのストーリーがたくさんあり、興味深いですね。
コーヒー生産世界第一のブラジル産でサントス港から出荷されたものを「サントス」と呼ぶそうです。苦みと酸味が抑えられていて、風味や香りがソフトでとても品の良いマイルドな味。とても飲みやすいコーヒーです。