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Rikako Ikeda コラム No.27

素敵なお客さまとのエピソード④

お客さまとのエピソード、それが素晴らしいものだからこそ、敢えて皆さまにご紹介していきたいと思いスタートしたこのコラム、今回はフランス貴族のゲストに纏わるエピソードです。

貴族から学んだ誇り高き思想、それがフランスでも有名な格言であるノブレス・オブリージュ(Noblesse Oblige)です。私が最初に勤務したホテルニューオータニ東京のVIPゲストの一人に、あるフランス人の貴族のお客さまがいらっしゃいました。当時はマルティーニ&ロッシという酒造関連の会社で国際セールスを担当されていました。年に数回、日本をはじめアジア諸国にビジネス旅行へ出かけられます。

このお客さまはオペラやバレエ、クラシック音楽が大好きで、出張中でも必ず時間を見つけて楽しまれる方で、ホテルに予約が入ると、コンシェルジュは事前にそれらのスケジュールを確認し、お客さまとコンタクトを取りながら、手配するのが常でした。ある日バレエのチケットを引き渡す際、たまたま私がしていた時計がエベルというスイスのブランドで、このお客さまがフランスを出られる前にちょうど奥様へプレゼントされたモデルと同じ!だったことがきっかけで、様々な話題を交換するようになりました。

お客さまは絵画鑑賞も大好きとのことで、私の趣味とも一致しました。その年、家族とヨーロッパ旅行を計画していてそのことをお伝えすると、お客さまから、パリに来たら家族皆様とお目にかかりましょう!と言って下さいました。そしてパリでお客さまと再会!私と家族を暖かく迎えてくださいました。

このお客さまは、実はフランスの貴族の称号、侯爵-Marquisをお持ちの方で、今でこそ、フランスはあのフランス革命の後、共和国を確立しているので、侯爵といえども他のヨーロッパの今でも王室、貴族が現存する国に比べると特権は多くはありません。しかしながら、このお客さまは、パリ、16区の高級住宅地にImmobilier(邸宅)を持ち、Appartement-アパルトマンに住むということは、建物の中の一戸に居を構えることを指しますが、このお客さまはアパルトマンの建物全てを所有し、その中には兄弟、親戚などが1フロワーずつ居を構えていました。さらにパリ郊外、北部のBeaurepaireという街に広大な城を所有し、週末をはじめバカンスや狩の時期など、城に滞在。又このBeaurepaireの街のMonsieur le mairie-市長でもありました。お城と言えば、あのマイケル・ジャクソンが、かつて彼の城を購入したいと申し出があったこともあったとか・・・

さて前置きが長くなりましたが、この貴族のお客さまから私は、誇り高き思想―つまりフランスの格言にある、“ノブレス・オブリージュ”「位高ければ、務め重し」の思想を学びました。お客さまは社交が多く、会食やパーティー、コンサートや観劇―オペラやバレエに良くお出かけになります。パリ オペラ座の名誉役員であり、フランスの芸術・文化継承・発展を支える重鎮です。オークション、趣味のゴルフに加え、秋になると貴族趣味の狩りも楽しみます。その他、家族所有のパリの不動産業(パリのオペラ通りの商業用ビルやラペ通りのカルティエのビル、他パリ16区のImmobilier、6区、7区の所有するAppartementの管理の他、所有の“シャトー”(城)を守るDemeures Historiquesの役員として、個人所有の城の保存、修復にも力を注いでいました。

フランスの財産ともいえるこれらの建造物や庭園を守る義務を担っています。前にも記しましたが、ご自身の城のある街Beaurepaireの市長でもあるので、会議や交渉も多く、市民の声にも耳を傾け、彼らの生活を守っています。本当に一週間、バイタリティーに溢れ。しかも、それぞれのシチュエーションにふさわしい服装はもちろん、会話やスピーチなど準備するのです。オペラ座公演の演目の初日に役員とダンサーが集うカクテルが催されると、そのカクテルに顔を出し、スピーチやダンサーを励ます為のほんの数十分の為に、タキシードを着用されるのです。

パリと城のある街を一日に自身の運転で何度か往復することもしばしばです。そんな生活に一度たりとも、不平を言っているお客さまを私は見たことがありません。むしろそれぞれの役目、義務さえも楽しまれているのです。普通なら「時間がない!」とか「忙しい!」という言葉が出てしまうところでしょう。今でも印象に残っているお客さまの言葉をご紹介します。「自分は侯爵という立場でこの世に生を受け、美しい城を譲り受けました。私の使命は、それらを守り、自分の子供達に引き継ぐことです。又多くのソシアル、オフィシャル、チャリティの業務をこなすのは、こういう立場に生まれた自分のするべきことだと受け止めています。」

忙しい現代社会、自分の立場を理解し、義務を果たすことを楽しむ事、人生に必要なのではないでしょうか。

オフランス 赤ワイン:SIMPOSIO

オフランス 赤ワイン:SIMPOSIO

私のお気に入りの赤ワイン、SIMPOSIO。今回はこの赤ワインに合うアレンジとしてグラニテ、コンフィチュール、ジュレを同じSIMPOSIOの赤ワインで作ってみました。コンフィチュールは、りんごを細かくし赤ワイン味に。シャルキュトリ(charcuterie)にコンフィチュールを添えました。SIMPOSIO独特の甘い優しい香りと繊細なスパイスの香りがシャルキュトリーと合い一層引き立ちます。オーク樽で丁寧に熟成されたその味わいが素晴らしいマリアージュを醸し出しています。これから初夏に向かう季節、赤ワインは少し冷やしても良いですね。グラニテはお食事の途中のお口直しにもピッタリ。ジュレはミントを添えてデザートに。SIMPOSIOの赤ワイン、是非お試し下さい!