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Rikako Ikeda コラム No.26

素敵なお客さまとのエピソード③

お客さまとのエピソード、それが素晴らしいものだからこそ、敢えて皆さまにご紹介していきたいと思いスタートしたこのコラム、今回はホテルに多く滞在する著名人のエピソードです。お客さまのお話は通常極秘ですが、素敵なものだからこそお名前も敢えて記したいと思います。私の勤務していたホテルにアメリカの有名な俳優で、リチャード・ギアさんが良く宿泊されました。映画のプロモーションの為に来日の際のエピソードです。リチャード・ギアさんは「アメリカン・ジゴロ」、「愛と青春の旅立ち」、「コットンクラブ」、「HACHI 約束の犬」、日本の映画「八月の狂詩曲」など代表作がたくさんあり、私もほとんどを見ました。

さてある朝、リチャード・ギアさんのお部屋から電話が鳴りました。要件は、午後の映画の記者会見用のスーツをプレスして欲しいという、いかにもシンプルなリクエスト。白羽の矢が私に当たり、晴れてリチャード・ギアさんのお部屋にスーツを取りに行くことになりました。客室係の女性スタッフと共に、部屋のドアをノックし、「Concierge!」とドア越しに名乗ると、ドアが開き、ご本人がバスタオルを一枚、腰に巻いた状態で扉の向こう側にいらっしゃいました。

そしてスーツを手渡して下さいました。お預かりするスーツの点数やボタンの数、最後に出来上がり時間を確認し、速やかにお預かりしました。ランドリー係へ引き継ぎ、2時間後のデリバリーまで、ロビーのコンシェルジュ業務に執心。2時間が経ち、お約束の時間になったので、早速お客さまのお部屋へスーツのプレスが出来上がったので、その旨をお知らせするメッセージを入れました。

早速応答があり、客室係の女性スタッフと共にデリバリーすることに。お部屋のチャイムを鳴らし、ご本人と再び対面。もう私たちの顔を覚えていらっしゃったのか、快くお部屋に通して下さいました。今度はきちんとシャツとネクタイ、そしてズボンも着用されていらっしゃいました。

さてスーツをクローゼットにお掛けするのかお伺いすると、リチャード・ギアさんは、まずジャケットに袖を通されました。鏡の前でポーズを取られ、「Perfect!」とおっしゃられたその直後、非常事態が起こったのです。何と右袖と左袖のボタンの数が違うのです。「Excuse-me! May I check your buttons on your jacket?」とお伺いし、近くに寄り再確認すると、やはり右袖のボタンが一つありません!お預かりしたときは確かに同じ数があったのに!これは大変なことです。お部屋で落ちたのか、スーツをお持ちする行程で落ちたのか、それとも・・・・!

まずお部屋の床を確認。見つからず・・・お客さまには、大至急対処することをお約束し、スーツのブランドは、ジョルジオ・アルマーニですが、その詳しい型番、ボタンの特徴をメモしお部屋を後に。(お客さまのスーツには替えのボタンが付いておらず、代用することができません)歩いてきた道のり、客室係のオフィス、プレスをした作業場全て確認。残念ながら見つかりません。コンシェルジュの業務として、ジョルジオ・アルマーニのブティックへ連絡。ボタンの捜索開始です。プレス会見の時間も刻々と迫って来ています。のんびりしていては間に合いません。ブティックには全く同じボタンはありませんでしたが、似たボタンがありましたので、早速お店の方がホテルまで届けてくださいました。

さて、そろそろお客さまへ結論を申しあげなくてはならない時がやってきました。今度は客室係の責任者と共にお部屋へ。まず丁重にお詫びし、ボタンは結局見つからなかったこと、ご提案としてボタンの数を左右揃えるか、他の目立たない場所からボタンを移動して数を揃えるか、又はブティックで見つけた似た感じのボタンに総取り換えするか・・・

すると、リチャード・ギアさんのお答えは私達の予想とは全く違うものでした。こう言われたのです。「ホテルの皆さんがそこまで真剣に私のボタンを探してくれたことに正直感激しました。今日の記者会見は、あえて一つボタンが取れた状態で出てみようと思う!」っと。そして、さらにこう付け加えられました。「そうだ!記者の人が、私のジャケットのボタンの数が左右違うことに気づくかどうか試してみよう!」と。「記者の皆さんは私の顔を見るので忙しいから、スーツのボタンなど気にも留めないだろう!でもおもしろいからやってみよう!後で又その会見の記事や映像を一緒に確認してみよう!」とおっしゃられたのです。

その晩の記者会見の様子がテレビで放映される度に、私はもちろんホテルスタッフ全員が固唾を呑んで、ジャケットのボタンが見えているかどうか、又何か記事が出ているとそのことに触れた記事がないかどうか確認し合いました。おかげ様で、リチャード・ギアさんのおっしゃる通り、だれもこの左右のボタンの数の違いに気づかれる方は無く、ホッと胸をなで下ろしました。それにしても何と遊び心がある方でしょう!

リチャード・ギアさんは、プライベートでも俳優そのものでした!なぜ映画の中で、あの深みのある表情、演技が出来るのか、彼自身にゆとりとユーモアと優しさがあるからなのだと、あらためて実感させられました。

オフランス コーヒー:キリマンジャロ焙煎豆

オフランス コーヒー:キリマンジャロ焙煎豆

これから初夏に向かう季節、冷たい飲み物やデザートを頂きたくなります。酸味のある爽やかな香りと味わいのキリマンジャロコーヒーで、アイスコーヒーとアフォガード、コーヒーゼリーを作ってみました。アイスコーヒーに入れる氷もこのキリマンジャロコーヒーで作りました。溶けても味が薄くなりません。酸味のあるキリマンジャロコーヒーだからこそ、アフォガードのバニラアイスクリーム、コーヒーゼリーに添えるクリームの甘さも丁度良く感じられます。初夏から夏にかけて、是非コーヒーをアレンジした冷たい飲み物やデザートを味わってはいかがでしょうか。