一流のコンシェルジュストーリー、４回目はスイス、ジュネーブのコンシェルジュ、アルド・ジャコメロ（Aldo Giacomello）です。アルドの勤務するホテルは、レマン湖の畔に立つホテル ボー・リヴァージュBeau-Rivageでした。“美しい湖畔”というまさにレマン湖を望むホテルにふさわしい名前を冠します。1865年の創業から現在に至るまで４代にわたり、メイア― Mayers家によって守られて来たという歴史を誇る個人経営の5つ星ホテルです。その優美な佇まい、家庭的な雰囲気、まさに個人の邸宅に招かれた様な気持ちになります。

ボー・リヴァージュは、ハプスブルグ家皇妃エリザベート、ギリシアやモナコ王室、昭和天皇、ダライラマ法王、アラン・ドロン、カトリーヌ・ドヌーブといったセレブリティにも愛されてきました。（１898年、かつてのオーストリア・ハンガリー帝国の愛称シシーことエリザベート皇后は、宿泊していた際、このホテルの前の船着き場で不慮の最期を迎えてしまいました。今でも皇妃を偲んでこのホテルに遺品が展示されています。）

美しい吹き抜けのアトリウムや花があふれるロビーに、重厚なコンシェルジュカウンターがあります。レマン湖を望むレストラン、ル・シャボテLe Chat-Botte（長靴を履いた猫の意）はロマンティックな雰囲気、王侯貴族の 気分を味わえます。

コンシェルジュのアルドの国籍は実はイタリア人。スイスでコンシェルジュとして勤務するのですから、数か国の言語を流暢に操らなくては仕事になりません。アルドも母国語であるイタリア語、そして英語、フランス語他を話すスーパーコンシェルジュです。又スイスは美しいアルプス、登山鉄道など古くから歴史ある観光立国として栄え、それ故ローザンヌをはじめ数多くの有名なスイス式ホテルマネジメントを誇りとするホテル学校もあり、 レマン湖周辺には一流のホテリエが働くパラスホテル（宮殿の様な歴史的な建物をホテルにしたもの）が多数存在します。そのレベルの高さは世界一といっても過言では無いでしょう。

有名なローザンヌホテル学校Ecole d’Hôtelière de Lausanne EHLの入り口には「第一印象に二度目は無い」〝There is no second chance for the first impression″という言葉が掲げられています。毎回ゲストとの出会いを大切にするというスイス式おもてなし術は、私達日本人の「一期一会」にも通じるものがあります。

スイスで一流のコンシェルジュの地位を築いたアルドのおもてなしが、如何にきめ細かいものかが伺えます。金融の街ジュネーブでは秘密保持を必要とする相談や高級スイスメイドの高級時計にまつわるリクエストも多いそう。その一方で、スイスの庶民的なチーズフォンデュやラクレットの美味しいレストランや、オフィシャル観光ガイドの奥様（彼女もイタリア人）が市内のお薦めスポットを友人の様に案内してくれます。スイスではあらゆる国籍のコンシェルジュが、スイス人という国の観光に多く貢献しています。スイス式一流のおもてなしを、ぜひコンシェルジュから受けてみてはいかがでしょうか。