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Rikako Ikeda コラム No.68

ホテルと薬局のストーリー①サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局

HOTELの語源は、旅人・客・宿主を意味する「hospes」。これから派生した中世ラテン語の言葉に「hospitalis」があり、手厚いもてなしを意味します。

「hospitalis」は、病院を意味するのフランス語の「hôpital」、英語の「hospital」になりました。又「hospitale」は巡礼や参拝者、旅人の為の宿泊所のこと。その後、更に言葉は進化し「hotel」という言葉が誕生。Hos…やHo…から始まる単語はこの流れを汲み、人をもてなす、保護する目的の場所の名前に良く使われています。病院Hospitalには、私たちの身体、心を治癒する為の薬、つまり薬局とは切っても切れない関係があります。今月から数回に渡り、世界に現存する美しい薬局Pharmacyについてお話していきたいと思います。なぜなら、ホテルのコンシェルジュ業務の中でも、滞在中に体調を崩される方のケアとして、医師の往診、病院の紹介、薬局のご案内は非常に大切で神経を使うものだからです。それゆえ日頃より、日本のお客さまはもちろん海外のお客さまにも対応して頂ける、英語を話す医師やホテル近くの病院、さらには大学病院とも連携をとっておくことが重要です。そしてホテル周辺の薬局はすぐご案内出来る様にしています。

さて、世界最古の薬局をご存知でしょうか。それはイタリア、フィレンツェにある、「サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局」(Officina Profumo-Farmaceutica di Santa Maria Novella)です。薬局とは信じがたい程豪華な天井やシャンデリア、大理石のフロアー、まるで宮殿のような空間が広がっています。日本にもいくつか店舗がありますので、日本に居ながらもその雰囲気を感じることが出来ます。サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局の歴史は古く、1221年に修道士たちが薬草を栽培し、薬や軟膏を作り始めたことが起源とされています。そしてこの世界最古の薬局のあるフィレンツェには、「メディチ家」の存在が大きく関わっています。メディチ家は、ルネサンス時期の金融業(銀行)で財をなし、芸術家のパトロンとなった一族であり貴族です。15世紀のルネサンス期のフィレンツェでは、コジモ・ディ・メディチやロレンツォ・ディ・メディチというメディチ家の当主達が大きな力を持っていました。

メディチ家の紋章は「金地に赤い数個の玉」という図柄。ローマ教皇の地位に上りつめたレオ10世やその従弟にあたるクレメンス7世はメディチ家出身。教皇の紋章にもメディチ家の金地に赤い数個の玉がデザインされました。メディチ「medeci」家の名は、医師を意味すmedico(単数形)、medici(複数形)に由来し、したがって医師、もしくは薬種商の意味です。昔の薬の丸薬が赤い球であったこと、血液を吸いだすための丸いガラス玉に似ているからなど諸説あります。(メディチ家が大富豪となった職業、銀行業や両替にちなんで、貨幣又は両替商のはかりの分銅を表すとも言われています)メディチ家は、出身地の田園地帯ムジェッロで、その土地で採集された薬草などで薬を作り、修道院で薬を調合する技術を開発し、医者、薬屋として身を立てた後、財力を基盤としてルネサンスが開花したフィレンツェに進出し、金融業でもっと大きな成功を手に入れました。良薬と反対の意味では、かの有名な「ロミオとジュリエット」でジュリエットが飲んだ薬は、神父様から一時の仮眠薬として与えらた物として登場し、一族の カトリーヌ・ド・メディシスがフランス王家に嫁ぎ、王位継承をめぐる争いでたびたび毒薬が登場するのは、まさにイタリアのメディチ家らしいお話です。メディチ家の逸話に想いを馳せながら、是非店内に足を踏み入れてはいかがでしょうか。

サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局には、800年以上が経った現在でも、その伝統を受け継ぎながら、香水や石鹸、スキンケア製品、さらにはディフューザーやポプリ、キャンドルまで幅広い商品があり、素晴らしい香り漂う空間の中で自分のお気に入りの品を選び、試すことが出来ます。私も度々この薬局を訪ねます。まさに心身共に癒されます。

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